田崎健太による長州力の評伝。

長州力の人生を本人を含む多くの人の証言と、事実の積み重ねで描いた労作。
終盤5分の1くらいはテンションが下がっているように感じられたが、それもまたリアル。
存命の人物を描くのはどうしても難しい。

プロレス界という虚実入り乱れた世界を生き抜いてきた人たちを向こうにして、意味のある証言を取っていくのは本当に大変なことだったと思う。
対象がまだ生きているとなればなおさら。

僕の仕事も誰が本当のことを言っているかわからない状態はよくある。
それが故意なのかそうでないのかも含めて。
故意に嘘をつかれているならあきらめるしかない、と仮定して判断を進めることがあるが、考える余地がありそうだ。
まあ、真実を知ることが目的である田崎さんと、そうではない僕の違いはあるのだけれども。

長州力はアントニオ猪木の率いた新日本プロレスからジャイアント馬場の率いる全日本プロレスへ移り、また新日本に戻り、自分の団体を作り、もう一度新日本に戻り、また出た。
その意味でアントニオ猪木本、ジャイアント馬場本に欠けていた視点を補完することができた。

プロレス界に関係のない人が書いたからこそ書けた本だと思う。